大判例

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東京高等裁判所 昭和41年(行コ)11号・昭41年(行コ)22号 判決

旧国税徴収法(昭和三四年法律第一四七号による改正前のもの)は、国税が国家財源の大宗であるところから、公益的見地に立つて国家財源を確保せんがために、その第二条第一項において「国税及其ノ滞納処分費ハ総テノ他ノ公課及債権ニ先チテ之ヲ徴収ス」と規定して国税徴収優先の原則を宣明しているが、この原則を無制限に貫くときは納税人の財産上に質権または抵当権のごとき強力な担保物権を有する債権者も国税に対しては劣後的地位に立たざるを得ず、かくてはこれらの担保権者も後発の国税によつて既得の権利を害され不測の損害を蒙るに至り、取引の安全を著しく害する結果となるから、国税徴収優先の原則を最大限に維持しつつも、なおこれを調整するためその第三条において、「納税人ノ財産上ニ質権又ハ抵当権ヲ有スル者其ノ質権又ハ抵当権ノ設定カ国税ノ納期限ヨリ一箇年前ニ在ルコトヲ公正証書ヲ以テ証明シタルトキハ該物件ノ価格ヲ限トシ其ノ債権ニ対シテ国税ヲ先取セサルモノトス」と規定して、担保権者中特に質権者および抵当権者に限定し、右の限度で、国税に対しこれを保護することとした。ところで右第三条にいう「納税人」とは、「納税義務を負担する者」の意に解すべく、第二次納税義務者である合名会社および合資会社の無限責任社員、納税保証人等をも含むものと解するのが相当である。けだし、もし、納税保証人が同条にいう「納税人」に含まれないとすれば、それは、納税保証人の債務は国税債務ではないということを意味することになり、かくては納税保証債務については第二条第一項の適用はないとの結論に至らざるを得ず(なお、第三条の適用はないが、第二条第一項の原則の適用はあるとすると、納税保証人の財産上に担保権を有する者は、国税に対し第三条所定の最小限の保護すらも受け得ない結果となり、甚だ不都合である。また、新国税徴収法第一章第三節のような調整規定を欠いていた旧法下においては、納税保証債務の納期限と質権または抵当権の設定時との前後で優劣を決することは、法律に根拠をおかない解釈として許されない。)かかる結論は納税保証なる制度を設け、国家の租税収入の確保をはかつた同法の趣旨に反することになるからである。もとより担保権者において予測し得ない担保権設定者の納税保証により、担保権者の債権が国税に優先されその結果担保権者の債権が害される場合のあることは考えられるから、以上のような解釈は担保権者に酷であるともいえようが、このような場合に担保権者には詐害行為の要件を主張して、納税保証契約の取消を求めることにより救済の途が残されており、しかも旧国税徴収法第三条の立法趣旨は前述のとおりであるから、特に旧法下にあつては納税保証人の債務についてのみ、予測可能性の点を重視してその取扱を異にすることは、理由に乏しいといわなければならない。

(古山 川添万 秋元)

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